■籠の中の黒い心臓 vol.11(2015年10月17日)@小岩bushbash
現在多方面で注目を集めるエモヴァイオレンスsto cosi cosi、1stアルバムをリリースし精力的にライブを重ねるREDSHEER、そして大阪からSTUBBORN FATHERとSeeKという化物バンドを招聘し、ハードコアでガッツりと固めて来た。
言ってしまえば東京と大阪の新たなる激音バンドのガチンコ対決な日だったし、一バンドたりとも休まる暇なんて与えてくれないイベントだったと言える。
・sto cosi cosi
ボーカルの方の少し気の抜けそうな「行くぞー!!」って掛け声と共に先ずはストコジのライブから。
killieやTialaといったバンドが生み出すハードコアのスリリングさをこのバンドは持っているし、日本でここまでピュアなエモヴァイオレンスを鳴らしているバンドは他に中々いないけど、ライブでの瞬発力は抜群だ。
killieがライブバンドなのは、一瞬たりとも見逃してはいけないという緊張感の中で終わりなく音を放ちまくってくるからだと思っているけど、ストコジもそんなライブを展開しているし、ボーカルの方のナード感全開なパフォーマンスも含めて目が離せないライブをするバンドだ。
合間合間に「イェーイ!!」と「行くぞー!!」を連発し、妙に気が抜けそうな気分になりつつも、演奏面は全く隙は無し!!次々と繰り出される曲はショートでありながら必殺のキメの連続で、見事な絶頂感の連続に観ている側がアクメをキメるしか無くなる。
そして曲間以外全く気が抜けないまま灼熱のライブは終了。いきなりハートに火を付けまくってくれた。
・SeeK
ギターレスになってツインベースサウンドにより磨きがかかりまくっている大阪が誇る激重破滅的美暗楽団ことSeeK!!東京でライブをする機会が本当に少ないバンドなので、こうして東京で観れる事がまず嬉しい。
半年振り位にライブを観たけど、今後リリースされるだろう曲も含めてツインベースの重さはそのままに、二人のベーシストがよりメロディアスなフレーズを奏でる事が増えていたのが驚きだ。
ミドルテンポの中で前へとつんのめっていくドラムが曲の体感の推進力を上げながらも、ツインベースが最早ツインギター状態とも言える繊細で複雑な絡み方を続け、音のソリッドさだけではなく、SeeKの元々の持ち味である繊細で暗く退廃的な空気感もパワーアップしていたと思う。
何よりもボーカルのSuguru氏のボーカルは何度ライブで聴いても凄い。圧倒的声量でドス効きまくったシャウトで殺しにかかってくるけど、そんなヴァイオレンスさの中には高い歌唱力に裏付けされた感情の機微の表現力や歌心も感じるから、Suguru氏のボーカルは何度聴いても心臓に突き刺さる。
少し長めの曲を中心とした全4曲、蜷局を巻く黒蛇のヘビィネスは全然ブレずにパワーアップしていた。
・STUBBORN FATHER
同じく大阪が誇るハードコアヒーローSTUBBORNはSeeKとは違って、より直情的なライブを展開、前にも増して攻めしかないライブを繰り出す様になっていた。
今回はここ最近は定番化していたANODEの「隠された太陽」のカバーはプレイせずに、「裏側」、「未定」、「降伏フィルム」、「痣」、「創造の山」と考えられる限り最高のセットでのライブとなった事からバンド側の「ブチ殺してやる!!」っていう意気込みも全開!!
この日のSTUBBORNはCamel大橋氏のドラムがキレにキレまくっていたと思う。繰り出されるドラムの音が完全にヤクザみてえな暴力性しか無くて、いつも以上に前のめりに攻めるから、他の楽器隊も見事に攻めの音へと引っ張られて、より速く残虐になった音に加えて、鋭さが増し、シャープで身軽なのに、パンチ力はヘビィ級って感じのエモヴァイオレンスの理想形とも言える音しか無かった。
強度と速さが増幅し続ける音の中と蛍光灯のみの照明の中で叫び狂うshige氏のヒーロー感も決まりまくっていて、ヒーローというか最早神秘性すら感じる出で立ちに男の子なので震えちゃいました。
終盤の「痣」から「創造の山」の流れはやはり無敵!!やっぱりこう何度も自然に拳を上げてしまうライブをするSTUBBORN FATHERは紛れもなく「本物」のバンドだって話だ!!
・REDSHEER
大阪バンドの激アツなライブに触発されて東京が誇る3ピース暗黒混沌ハードコアREDSHEERもかましにかましまくっていた!!
プレイした曲は4曲と決して多くは無いけど、現在のREDSHERRが持つ激昂とその中の愛憎を吐き出すライブとなっていたと思う。
「Silence Will Burn」はやっぱり頭にプレイされちゃうと一気に体の血が駆け巡る衝動に襲われるし、「Blindness」は激の中の歌心が黒く輝く。パフォーマンスに仕掛けなんて無いし、ナイスミドル3人が爆音を放つ飾らないライブは剥き出しのままであるからこそ胸に来る物がある。
7月の二万でのレコ発以来にプレイされた新曲はドラムパターン等のアレンジも大きく変わってよりパワーアップして再び日の目を見たけど、不気味に蠢くベースとドラムのみの始まりから、高まった熱が爆発して刻みに刻みまくるギターで惨殺!!「どんな譜割りしてんねん!!」って複雑極まりないドラムを絶頂した顔でパワフルに叩くrao氏もギア入りまくり!!この一筋縄じゃいかなさこそがREDSHEERの魅力だと思う。
「殺るだけ殺って死んでやるよ!!」ってMCで語っていた小野里氏も、その言葉通りに更なる放出をボーカルとベースで体現、ラストの「Curse From Sad Spirit」でオーディエンスを単なる放置死体に変えてライブを終了。いやはやこのナイスミドルはどこまで初期衝動をドス黒く燃え上がらせるのだろうか…
・wombscape
トリは主催のwombscape。「新世界標本」リリースからガッツりツアーを回っていたけど、9月のREDSHEER企画以上に4人の音が固まり、まだ手探り感もあった現体制初期のライブとは見違える程になった。
この日もセットは「新世界標本」を再現するといった内容だけど、冒頭とラストのSEも含めて、wombscapeの世界へと引きずり込む強さと解像度の高さを感じるライブだった。
「真白な狂気」と「新世界標本」のカオティック色の強い2曲では楽器隊の音が這い回る蠢きを体幹させられたし、情報量の多いベースと殴りつけるドラムと低域ガンガンに出しまくっていくギターが本当に重苦しいし、Ryo氏のボーカルやパフォーマンスも狂気に身を任せまくる。
「正しい愛が正しい絶望に変わるまで」は今までのwombscapeには無かったタイプの曲ではあるけど、Ryo氏が歌い、楽器隊もwombscapeの持ち味である視覚的情景を鮮やかに描き出し、その美しさを最後の最後で崩壊させる絶望感が生々しさや肉々しさや血腥さといった言葉が似合うまでにダイナミックな表現へと昇華していた。
ラストのSEが流れて客電が点いても、ステージから目が離せない緊張感に襲われ、そのSEが終わってベースのwataru氏が一言「ありがとう。」と言ってようやく現実に帰って来れた。それほどまでに音とステージングで引き込むバンドへとツアーを経て進化していたのだ。
今回のwombscape企画はハードコアで固めながらも、全5バンドが強烈な音で小岩を染め上げていたし、決してみんなで盛り上がるタイプでは無く、寧ろ突き放すタイプのハードコアバンドばかりではあったが、突き放されるからこそよりそれに縋ってしまいたくなる様な音はまた魅力的であるし、僕はやっぱりそんなバンドに心が惹かれてしまう。
12/23にはアンチノックで実に2年半振りの開催となる「瞼ノ裏」で長いツアーのファイナルをwombscapeは迎える、その時は一体どんな世界と光景が見れるのかって想像するとやはり心の震えが止まらない。