■THE NOVEMBERS 10th Anniversary TOUR – Honeymoon –(2015年11月2日)@新木場Studio Coast
会場のコーストにはスタート30分程前には到着。最初は人もまばらではあったが、徐々に人も集まり、開演時間を迎える頃には大分人も集まっていたと思う。
フロアからは何とも言えない緊張感とワクワク感が漂う中、20分程押して10周年を祝福するワンマンが始まった。
メンバー4人が静かにステージから登場し新作「Elegance」から「クララ」でライブはスタート。ハナから幻惑的なロマンスに溢れる曲で空気をノベンバの物へと染め上げていく。アプローチ自体は派手じゃ無いし、4人はそれぞれ丁寧に音を紡いでいる印象ではあったけど、しとやかさが緩やかに煌めいていく。
初期の名曲「バースデイ」、「chernobyl」を序盤からプレイしたのは少し意外だったが、音の輪郭が空間的な広がりを感じるアレンジになっており、音源とは全く別の曲になりながら、最新作の曲ともシンクロを果たし、ノベンバが持つ残酷なロマンは初期から現在まで色あせずに存在していることが純粋に嬉しくなった。
「Elegance」からの「心一つ持ちきれないまま」と「裸のミンク」のスロウさによる淡々としたグルーブとそれを彩る音の色彩により惚れ惚れさせられて恍惚とした空気がフロアを包んでいく。
そんな甘い空気を完全に切り裂くノベンバの鋭利なるアンセム「dnim」で空気がは一変。ソリッドに刺々しく刺していく轟音ロックとダークネス、小林氏は先程までの優しい歌声から、殺気立ったオーラを纏いながら叫びに叫び、他の楽器隊の演奏もそれに乗せられて熱が加速する。
そのままインダストリアルでメタリックでありながらも耽美な空気を生み出していく「鉄の夢」へ。吉木氏のドラムはこうしたインダストリアルなビートの曲に凄く合うし、淡々と無慈悲な空気のまま音を放ち、叫ばれる言葉通りに全てを裁断していく悪夢の音。ただ甘いファンタジーを鳴らすだけじゃないのがノベンバだし、こうした残酷な美しさも放つ事が出来るからノベンバなのだ。
疾走する轟音が最高に気持ちよくてトランスしそうになった「236745981」を挟んで、「一番最初の曲をやります。」とMCしてからの「marble」へ。バンドの持ち曲の中でも屈指のバラッドをこう中盤にプレイされるのは中々来る物がある。決して派手な音は出していないし、一番最初の曲ということもあって普遍的だし、特別な濃さがある訳では無い。だけど、静寂が静かに燃える様な音が広がり、何だか感動してしまった。
終盤は本当に一瞬で駆け巡ってしまったと思う。新作からの「エメラルド」の浮遊感に漂い、「出る傷を探す血」の荒涼としたざらついたロックのダークネスからの「dogma」、「Blood Music. 1985」、「Xeno」という轟音で突き刺し捲りながら、エロス溢れるロックの背徳感溢れる曲のラッシュは本気で痺れた!!比較的大人しかったフロアも着火し、体を揺らして音に溺れる人が増えていた印象だ。
特にドラマティックだったのは「Misstopia」の時の空気感だった。ノベンバは確かに薄暗さや狂気的な音を鳴らす事もあるけど、それを超えた先にある優しさや温もりも歌えるバンドだし、ミラーボールの照明がフロアを照らしながら祝祭の空気を生み出していく光景は心の底から美しく思ったよ。
小林氏の「最後の曲です。」とのMCからの「きれいな海」は祝祭のエンディングに相応しい物であったし、純粋に鳴らされるメロディと歌が綺麗で仕方なかった。
メンバーが一旦捌けてからのアンコールは彼ららしい静寂のアンセム「今日も生きたね」。今回のセットの中で音を自在に変えながら、美しさも激しさも鳴らした今回のワンマンライブだけど、最後の最後は生を肯定する裸のままのバラッドなんだからずるいとしか思えない。
コーストの広いフロアの中で響く「今日も生きたね」はその日来た全ての人の明日を肯定する優しさがあり、僕は涙腺が緩みそうになった。だけど最後の最後で小林氏が「次に会う時まで元気で。」と言ったのが何よりも印象深かった。多幸感に包まれながら僕はその余韻に包まれていたよ。
セットリスト
1.クララ
2.バースデイ
3.chernobyl
4.心一つ持ちきれないまま
5.裸のミンク
6.dnim
7.鉄の夢
8.236745981
9.marble
10.エメラルド
11.出る傷を探す血
12.dogma
13.Blood Music. 1985
14.Xeno
15.Misstopia
16.きれいな海へ
en.今日も生きたね
最近ではEnvyやBorisとも対バンし、新たなファンも獲得しているノベンバだが、今回のワンマンはバンドのこれまでを総括するライブであった。耽美で残酷なロマンと人間臭い暖かさが生み出すファンタジーの様でもあるけど、日々を生きる人々の体温を感じるパフォーマンスに何度も胸が詰まりそうになった。
個人的に全17曲があっという間だったし、あと5曲はプレイして欲しかったという我儘もあるけど、十分すぎる程にノベンバの今を堪能させて貰った。
今後も十周年ツアーは続き、全国で祝福の時間を生み出していくだろうTHE NOVEMBERS。これからも目が離せないバンドだ。