■De Fragments/Milanku

2013年秋の魂を震わせまくった来日公演から2年、今年で結成10年を迎えるMilankuの3rdアルバムが遂に届いた。リリースは勿論Tokyo Jupiter Recordsから。来日公演後にオリジナルメンバーのギタリストの脱退があり、後任にはDark CirclesのFrancoisが就任。Francoisは今作のアートワークも手がけている。マスタリングはHarris Newman (Godspeed You! Black Emperor, Eluvium, Baton Rouge)が担当。
メンバーチェンジこそあったけど、今作でも基本的な路線は何も変わっていない。轟音系ポストロックとポストメタルを基軸に、真正面からドラマティックな轟音をぶつけてくる。正統派ではあるが、メロディセンスは更に磨かれている。
静謐さから激へと展開していく定番な手法は今作でも健在だし、常にメランコリックが泣き叫ぶギターとダイナミックなビートと男臭さ全開の魂の咆哮。シンプルな手法を用いているからこそ不純物ゼロのクリアな激情はどうしても胸に込み上げる物しかない。
大きく変化した点があるとしたら長尺曲が大分減り、4分台とかのコンパクトな楽曲が主体になり、楽曲展開にもサウンドにもハードコアな直情的なアプローチが増えた事だろうか。マーチングの様なドラムの応酬から前作以上に切れ味鋭く切り込む轟音フレーズが印象深い第1曲「Fuir Les Jours」からもバンドの進化は伺える。
前作でもこれでもかと展開されていた白銀の轟音は幻想的なメロディはそのままに、肉感的な感触も増えていると思う。第3曲「On S'épuise」はこれまでのMilankuには無かったアプローチが見え隠れし、第4曲「La Dernière Porte」の疾走感もこれまでには無かった音だ。
そんな中でもMilanku節とも言える轟音系ポストロックと激情とポストメタルのハイブリットさ、繊細さとダイナミックさが生み出す揺さぶりの激情の集合体な第5曲「L'ineptie De Nos Soucis」は今作のハイライトとも言える名曲であり、今後のMilankuの代表曲となるだろう。
第6曲「Dans Les Absences」ではインスト的なアプローチを繰り出しながらも終盤ではnone but air (at the vanishing point) のnisika氏のゲストボーカルが生々しい血の叫びを披露。そしてラストはMilanku史上最もポストメタルでヘビィな「Ce Fut Quand Même Notre Histoire」で寒々しい世界観を生み出しつつも、それを吹き飛ばす熱情で締めくくられる。
地道にだけど着実に歩みを進めてきたMilanku。国内外問わずに短命で終わってしまうバンドも多い中、10年に渡って活動を続けこうして3rdアルバムをリリースしたのは何とも感慨深さがある。
多少の変化こそはあるが、それは進化という言葉の方が正しいし、1stの頃からMilankuは優しい至福の轟音と激情をブレずに描き続けている。それが僕は本当に嬉しい。今作も前作同様に至高の一枚。購入は勿論Tokyo Jupiter Recordsのストアの方で可能だ。