■COHOL 裏現 OVER JAPAN TOUR Final [ 義眼 vol.6 ](2016年2月6日)@渋谷eggman
対バンにVampillia、ENDON、STORM OF VOIDという日本国内に留まらず、世界へとアプローチを続け、同時にカテゴライズを無効にする独自勢力を集めた特濃極まりない4マンライブ。
そんな特別な一夜ってこともあって、開演の時間で既にeggmanは本当に多くの人で溢れ、最終的には満員の動員を記録。日本のエクストリームミュージックの新たなる軌跡を刻む夜となった。
・Vampillia
トップからいきなり大阪のブルータルオーケストラ集団Vampilliaからスタート。今回は吉田氏・竜巻氏のツインドラムの10人編成で相変わらずの大所帯。
possession mongoloidがのっけから「お前らに説教する事があるねん!」とか言ってはいたけど、いつもに比べてお笑い的な仕掛けが無かったライブとなった。
いつもVampillaのライブを観ていると「今日はどんな仕掛けを仕込んでいるのか。」みたいな部分に注目しがちではあるけど、彼らの音楽自体のクオリティの高さがまず素晴らしいのを忘れてはいけない。
この日は新曲もプレイしていたが、Vampilliaにしか生み出せないポストブラック感がより際立ち、各メンバーの高いスキルが織り成すオーケストラ的なアンサンブルの鉄壁具合も含め、自らの音を本当に高純度で発信しているバンドだと今回のライブで改めて実感。何の仕掛けが無くてもVampilliaは凄いバンドなのだ。
でもやっぱり仕掛けは用意していて、毎度お馴染みの梯子が無いと思ったら、まさかの新アイテムであるトランポリン(無駄に折り畳み式)が登場。mongoloidがトランポリンをピョンピョンするなんて光景がライブ中に展開されていて、やっぱり笑ってしまった。
いつも以上に真面目な音楽的完成度の高さを提示しつつ、でもやっぱり悪ふざけは忘れない。そんなVampilliaのライブの面白さがモロに出たステージとなり、開幕からeggmanを大きく盛り上げた!!
・ENDON
今や世界へと羽ばたき始めている情報過密都市東京が生み出した戦略的ノイズバンドENDON。今回のライブはrokapenisが照明を担当するENDONにとって鬼に金棒な編成!!
しかし久々に観たENDONはノイズバンドでありながらどんどんノイズの文脈から外れに外れたバンドになっていた。それぞれのパートが放つ音自体強烈ではあるのだけど、その強烈さをそのまま押し出すのでは無くて、ノイズでありながらノイズが苦手な人でも聞きやすい音のバランスの良さが存在している。
過去の曲もメロディが想起される物へと変貌を遂げており、ノイズを使ってドラマティックな音像を提示するという、これまで誰かがやってそうで実はやっていなかった領域へとENDONは足を踏み入れているのを感じる。
かと言ってENDONが生温い音を出している訳が無く、個別の音の分離がはっきりしているからこそ、個別の音の強烈な毒素がより体内と五感に襲いかかる物となり、それはrokapenisの視覚を蹂躙する演出との相乗効果でノイズに独特の色彩を感じさせる物へとアップデートされていた。
40分近くのロングセットという事もあり、これまで以上のキャッチーさと同時にこれまで以上の強烈さを提示したENDON。このバンドはまだまだ先にある前人未到の世界へと飛び立って行くだろう!!
・STORM OF VOID
そしてこの日一番のストイックさと硬派さを持つインストスラッジトリオであるSTORM OF VOIDへ。このバンドは何も語らないバンドではあるけど、それは語らないのでは無くて、語る必要が無いだけなのだ。
ひたすらに重低音をお見舞いするリフの嵐、3ピースでなきゃ生まれないストイックな演奏の硬質さとタイトさ、一見強烈な音を足し算した音楽性かと思わせておきながら、ライブではそれぞれのパートが音のバランスをしっかり計算し尽くし、一番腹にガツンと来て、尚且つ躍らせる音を体現してくる。
この日は一曲だけJoy OppositesのAdam Grahamがゲストで参加、ギターボーカルがいる4ピースなスラッジサウンドを提示するというこれまでに無かったSTORM OF VOIDを魅せるサプライズも用意され、普段のライブのストイックさに加えて、歌ともう一本ギターが加わって叙情的スラッジな新たなる一面も楽しませて貰った。
そんなサプライズがありつつも、やはり彼らの真髄は3ピースだからこそ生み出せる極限まで削ぎ落とした重低音天国。徹頭徹尾に至るまで男臭さ全開のリフとビートに頭を振りまくったのだ!!
・COHOL
本日の主役であるCOHOLのアクトへ。大量のスモークがステージを埋め尽くす中で「冷たい石」からライブはスタート、ITARU氏とKYOSUKE氏の二人による演奏からいつも通りズタ布を身に纏い、顔に黒の包帯を巻いた衣装のHIROMASA氏がステージに登場した瞬間にフロアのボルテージは最高潮へ!!
そして畳み掛ける様に繰り出された「下部構造」、「暗君」、「地に堕ちる」の3曲で漆黒の炎で全てを焼き尽くすライブを展開!!前々からライブには定評があるバンドではあったが、今回のリリースツアーを経てバンドは更にパワーアップ!!美しく切り刻むギター、凄まじい精度と速さのドラム、鬼のフィンガーピッキングを繰り出すベースによる3ピースの暗部を描くライブアクトの精密さと美意識の高さ、そしてそれでも溢れ出てしまう熱さ、何もかもが三位一体の音として爆発を繰り出す事により、異様な感覚を感じさせるライブとなっていた。
印象的だったのはITARU氏のMCだ。毎回フロアをアジテートする熱い言葉を投げ掛けるけど、この日は「自らの好きな音楽に誇りを持て!」、「リスナーのみんながいるから俺たちはステージに立てる!」とこれまで以上に熱い想いを投げ掛けるMCに観ている側は冗談抜きに胸が熱くなってしまったよ。
そこから後半のセットは本当にあっという間だった。「不毛の地」の様な過去の楽曲を盛り込みつつ、「葬送行進」のズタズタの音に殺され、「絶えぬ火」のブルータルさに燃やされ、本編ラストの「砂上」の地獄の音像で完全燃焼という考えられるだけでも完璧なセットで幕を閉じる筈だった。
だけどクライマックスは鳴り止まない拍手により行われたアンコールにあった。プレイされたのはまさかの「灰下に色付く記憶」!!かつてのCOHOLの名曲が演奏された事が本当に嬉しかったけど、それ以上にこの日一番の熱さで繰り出される全身全霊のライブ!!
特にHIROMASA氏が顔に巻いた包帯を剥ぎ取り、素顔を晒して演奏した瞬間は否応なしに泣くしかなくなってしまった…例えどんなに暗黒だとかエクストリームミュージックと呼ばれても、COHOLの核にあるのは常に全身全霊の本気の熱さだけだって事。それが本当に嬉しくて嬉しくて…泣かない訳ねえし!!ズルいにも程があるよ!!
セットリスト
1.冷たい石
2.下部構造
3.暗君
4.地に堕ちる
5.不毛の地
6.葬送行進
7.絶えぬ火
8.砂上
en.灰下に色付く記憶
このライブにて「裏現」リリースツアーは終了したが、まだまだCOHOLは止まらない。今年は台湾ツアーに中国ツアーにヨーロッパツアーと日本だけに留まらず世界中を駆け巡るCOHOL。「裏現」にて本格的な海外進出を果たした彼らだけど、まだまだ夢の先に行く為に飛び回るのだ。
今回のツアーファイナルは僕個人としては世界に飛び立つCOHOLをしっかりと見送りたいという気持ちで足を運ばせて頂いたが、COHOLは更にパワーアップして日本に帰ってくるだろうし、その時は更に凄まじいバンドとなって僕たちの前に姿を現すだろう。
国内エクストリームミュージック独自勢力である彼らがここまで多くの人に支持されるまでになったのは、その音楽の素晴らしさは勿論だけど、どこまでも本気の熱さと絶対にブレ無い誇りがあるからだと僕は思う。
だからこそCOHOLがまた日本に帰ってくる時まで、いやこれからも僕は自分が大好きな音楽に誇りを持ち続ける事をここに誓うよ。