■The Bees Made Honey in the Lion's Skull/Earth
![]() | Bees Made Honey in the Lions Skull (2008/02/26) Earth 商品詳細を見る |
ディラン・カーソン率いるドローン暗黒神ユニットEarth。大名盤「Earth2」にて無慈悲の暗黒ドローン絵巻を展開し、SUNN O)))に多大な影響を与えたのは有名であるが、活動停止期間を経てシーンに復帰したEarthの音はヘビィさを削ぎ落とし、雄大さと不穏さをアメリカーナなサウンドで鳴らすユニットへと変貌を遂げた。今作はそんなEarthが08年に発表した作品であり、しっかりとしたバンド形態で録音された物になっている。そこには推進力を放棄した激重のリフは存在しない。空間を埋め尽くすのは美しく不穏なギターの残響音だ。
音数の少ないスローテンポのリズムだったりとか、ミニマムに反復するギターリフだとかは確かにEarthならではのドローンなサウンドは確かに存在しているが、今作で展開しているのは重過ぎる歪みのギターリフが空間を埋め尽くす拷問サウンドではない。広大さと壮大さを見せつける奥行きのある空間的サウンドだ。音数の少ない構成だからこそ、ギターの一音が、ドラムの一音が、確かな存在感を持っているし。それらの音を丁寧に組み合わせて広がっていくバンドのアンサンブルは正に鉄壁の一言に尽きる。BPMのスローさ、少ない音数でミニマムに展開する楽曲だとかはディランならではの手法ではあるが、それを余計な装飾などせずにオーガニックな形で鳴らされた事によって、空気の振動だったりとか、音に宿る鼓動なんかが本当にダイレクトに耳に入ってくるのだ。そしてそれらの音は何の縛りの無い形で緩やかに自由に拡散していく。緻密に作られたアンサンブルはEarthを、地球が繰り返している静かであり確かな躍動を細胞レベルで聴き手に伝えている。
ディラン・カーソンが長い時間をかけて行き着いたのは、四次元レベルでの生命の躍動を鳴らす雄大な音の世界であった。今作は決して派手な作品では無いが、数多くの楽器の音が重なり合い鳴らされる大地の躍動と息吹は緩やかでありながらも、聴き手の五感を確かに覚醒させる物である。僕達はただ今作で鳴らされている音に何も考えずに身を任せるだけで良いのだ、あらゆる感情をこの音は包み込んだくれるし、ただオーガニックな生命のアンサンブルの美しき世界に抱かれるだけで良いのだ。