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■【静かなる反抗声明】ANCHOR鷲尾、ロングインタビュー

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 新潟という北陸の最北端にANCHORというバンドが存在する。
 99年に結成、バンドの歴史自体は20年近くにも及ぶが、バンドの歴史に反してこれまでリリースした音源は本当に少なく、多くの人々に名前が知られていない存在ではあった。
 そんなANCHORは今年いよいよ1stアルバム「深層」をリリース、単独音源としては実に16年振りの作品となったが、これが本当に素晴らしい一枚となっている。
 決して分かりやすいカテゴライズされた激情ハードコアでは無い、非常に渋い一枚となっているが、バンドの持つ屈指のメロディセンス、ミドルテンポで決して攻撃的と言えるサウンドでは無いが静かに突き刺す2本のギター、パッキパキの硬質なサウンドが淡々と描くのは体制や日常の違和感や不条理に対する静かなる反抗。ANCHORが描くのはカテゴライズされる事を拒んだ静かなる反抗だ。
 10/1にweeprayとTRIKORONAの共同企画「様々な死覚」にて実に7年振りの都内でのライブも決まっているANCHORだが、このタイミングでBa/Voの鷲尾氏にメールインタビューを敢行させて頂いた。
 ANCHORが描く反抗の音楽から、新潟でバンドを続ける原動力まで、決してテキストの量は多くは無いが、その音楽同様に確かな言葉で鷲尾氏は語ってくれた。



・ANCHORの結成から現在に至るまでの経緯を教えてください。

 1999年結成し年末に初ライブ。初ライブから半年後にメンバーチェンジがあり坂井(Gt)加入、現体制のメンバーになりました。これまでにCDEP「キズ」、split7'ep(w/STUBBORN FATHER)、LIGHT YOUR WAY COMP(1曲参加)、DOiT DVDを発表。初期に比べれば年齢を重ね仕事や家庭の都合もありライブの本数は減りましたが、スタジオワークは欠かさず活動を続けています。



・初期と現在では音楽性はどの様に変わって行ったと思いますか?

 今と比べれば初期の頃は早くハードコア要素の強い曲が多かったと思います。
 現在は聴く人によってはハードコアと感じる曲は少ないかもしれませんがANCHORとしての芯の部分は当初より変わっていないと思っています。



・現在はどの様な方向性をバンドでは目指しているのでしょうか?

 特に方向性を決めてという活動はしていないので、何とも答えようがないですが聴いて観て何かを感じてもらえれば嬉しいですね。



・影響を受けたバンドなどがありましたら教えてください。

 メンバー各自の影響受けたバンドはバラバラだと思いますね。挙げればキリがないです。
 ANCHORを始める際にメンバー募集に書いたのはANODE,ENVY,THIS MACHINE KILLSなどでした。



・今年の6月に1stアルバム「深層」をリリースされましたが、チェンバロの様なギターアルペジオと空間的ギターのツインギターとミドルテンポのビートとグルーブが非常に特徴的な作品に仕上がってます。この様なサウンドを生み出す意図とは何でしょうか?

 僕らは意図を持ってこういったサウンドにしようと向かった訳でもなく、初期と現在の違いにも通じますが曲作りや活動を続けてきた結果、自然の流れで今のサウンドスタイルになりました。



・歌詞に関しては日常生活の違和感とそれに対する静かな反抗を歌っている様に感じます。その様な言葉を綴る意味とは何でしょうか?

 日常で見聞きする中で疑問や不満、怒りと自分が感じること等に対し自分が思ったことを詞を書いています。綴る意味と聞かれたら自己主張ですかね。



・楽曲はどの様に作られてますか?

 宮下(Gt)がフレーズを持って来て全員で合わせながら進めていく形で、その場のスタジオで出来た続きを再度宮下が持ってきて作り上げる形が多いです。その中で修正や構成の変化を重ねてやっていきます。



・単独音源としては00年の「キズ」、スプリットも入れると01年のSTUBBORN FATHER(大阪)とのスプリットから10年以上のブランクが空いての音源リリースとなりましたが、10年以上も間が空いて音源リリースの運びになった事はどう感じてますか?

 音源自体を作る事に対しこれだけの期間を開けるつもりはなく、曲の変化によりこれだけの期間が空いてしまった結果です。実際に2009年に音源作成の為の4曲プリプロを録りました。
 ただ次作はアルバムという考えがあり作曲を続けていました。その結果その後に出来てきた曲が前の曲との違和感を感じ再度作曲を重ねて昨年12月からレコーディングとなりました。なのでプリプロ録音した曲は入っていません。僕らとしてもようやく形に出来たと思いました。



・「深層」をリリースして周囲からはどの様なリアクションが返って来ましたか?

 直接的なリアクションはほぼありません。SNSなどで稀に見るくらいです。



・先ほどSNSでアルバムに対するリアクションを見るとありましたが、地方で活動するにあたってSNSの存在はやはり大きいでしょうか?

 SNSはメンバーでは長谷川(Dr)がfacebookをやってるくらいで他メンバーはしていません。ANCHORのtwitterに関してはライブ告知や誘われたライブの宣伝の為に始めました。県外のライブでは直接フライヤーを配る等の手伝いはできないので少しでも力になればと2014/12/20の孔鴉の前から始めました。
 今回、音源発売時の宣伝に対しての反応や、発売後のAKSK君や他の方のツイートを見た時は嬉しかったですね。地方での活動に関してSNSの存在はそこまで大きくないと思います



・近日TILL YOUR DEATHのオムニバスにも参加されますが、そちらに提供する楽曲はどの様な物に仕上がってますか?

 「深層」からの延長ではありますが多少の変化がみられると思います。


・ANCHORは新潟を拠点に活動していますが、新潟のシーンはどの様な物でしょうか?

 まず新潟に現在激情シーンはないですね。僕らの他に1.2バンド居たりした時もありましたが、ほとんど無かったと言えるでしょう。好きな人は居ると思いますが僕らの力不足ですかね。
 ハードコア自体はパンク・ユースクルー共に盛り上がっていると思います。



・激情ハードコア云々を抜きにしたハードコアパンク自体は新潟ではどんな歴史があり、またどのような形で現在に繋がっていると思いますか?

 歴史という事に関しては僕が語れることではないのですみません。バンド自体は現在でも10年以上続けているバンドが多いですね。なので現在への繋がりというより常に続けているという感じですね。
 あとは新潟で続けて海外ツアーにAGE(2007/2010),BLOWBACK(2008)が行っていたりします。


・新潟と他の都市部や地域との違いがあるとしたら何でしょうか?

 都市部に比べればバンド数も少ないと感じますし、多くの人の目に触れることも少ないでしょう。その為か新潟のバンドは過去も含め自主で音源を出すバンドは多いと思います。
 どこかレーベルから出してもらうのを待つより先に自分たちでリリースをして取扱いしてもらい活動するバンドが多く感じます。それとライブに来るお客さんが初見のバンドに対してはじっくりと観る気がします。


・鷲尾さんはライブハウス「新潟WOODY」の店長さんもされていますが、WOODYはどの様なハコで、またどんなバンドがライブをしていますか?

 前身の店舗から入れると1975年からあり、「LiveSpotWOODY」としては一度僕が始める際に移転していますが1982年から続いています。僕は3代目となりますがアルバイトから数え20年以上居ます。
 ジャンル問わずライブは受け付けていますが、多いのはハードコアパンクやガレージロックの企画ですね。


・新潟で他の地域の方にも是非チェックして欲しいバンド等がありましたら教えて下さい。

 同世代のハードコアバンドではSCRUMHALF、MADREX。それと先輩のSKYMARSは要チェックです。ロックバンドですがjyugatsunodrumもカッコいいです。


他のローカルのバンドでシンパシー等を感じるバンドがいましたら教えてください。

 大阪のSTUBBORN FATHERは付き合いも長く常に気になりますね。他に山形のWHAT EVER FILM,、青森のkallaqriなど気になります。


・逆に東京のバンドでシンパシーを感じるバンドはいますか?

 weepray.COHOLなどは活動の仕方や姿勢に感じるものがあります。


・WOODYで自主企画「私的見解」を定期的に開催していますが、「私的見解」はどの様なイベントでしょうか?

 企画自体は最近は定期的には出来ていませんが、先も話した通り新潟に激情シーンがなく単純に自分たちが気になる、観たいと思ったバンドを呼ぶことから始まりました。
 ANCHOR自体無名のバンドで、誘ってOKもらった時は嬉しかったですね。それによって繋がりも出来て僕らが呼ばれることも増えていきました。近年はツアーサポートの話があり企画を組む場合が多いです。


・新潟という土地でハードコアバンドを続ける原動力は何でしょうか?またローカルでバンドを続けていく意義とは何でしょうか?

 新潟だからとかではなく、単純に好きで続けているだけですね。バンドで東京に出ようと思ったこともないですし。


・10月に実に7年振りの東京でのライブが決まってますが意気込みがありましたら是非とも。

 今回は2年前から繋がりができたweeprayと昨年STUBBORN FATHERとのスプリットCDのレコ発で新潟に来た際に共演したTRIKORONAに組んでもらい感謝です。気付いたら東京でのライブは7年振りとなりましたが楽しみにしてます。


・ANCHORが目指す音楽の終着点は何処にあると思いますか?

 目指す音楽の先は全然見えないですし、終着点へ辿り着くことはないと思います。


・今後の展望がありましたら教えてください。

 今後また曲が増えてきたら音源として形にしたいですし、誘われるライブは極力出演したいと思いますが、各自の都合もあり難しい場合もあります。やれるその時々を大事にして活動していきたいと思います。



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【ANCHORライブ予定】

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10/1(土)東京国分寺Morgana
TRIKORONA/weepray共同企画[様々な死覚]
TRIKORONA
weepray
Kowloon Ghost Syndicate
NoLA
Fredelica
No Value
sto cosi cosi
ANCHOR




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11/12(土)大阪HOKAGE
[孔鴉-koua-]
SWARRRM
ANCHOR
sekien
Kowloon Ghost Syndicate
THE DONOR
agak
SeeK
STUBBORN FATHER



12/23(金)新潟WOODY
[私的見解]




【ANCHORリリース情報】

V.A.「TILL YOUR DEATH vol.3」
ANCHOR
CYBERNE
DEAD PUDDING
kallaqri
NoLA
REDSHEER
URBAN PREDATOR
weepray
wombscape
明日の叙景
冬蟲夏草

11/9リリース予定




【ANCHORオフィシャルサイト】http://anchor-niigata.tumblr.com/
【ANCHOR twitter】https://twitter.com/anchor_niigata



photographer : ミツハシカツキ



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■それでも世界が続くならワンマンツアー2016「再生」(2016年8月28日)@下北沢club Que

 今年に入りROCKBELL recordsにレーベルを移籍し、バンドの新章を宣言するタワレコ限定シングル「狐と葡萄」をリリースした、痛みも苦しみもリアルとして鳴らすオルタナティブロックバンド「それでも世界が続くなら」。
 そのリリースを記念したワンマンツアーは「再生」と銘打たれ、それは昨年メジャーからリタイアしながらも再び前線に帰って来た事、極限のリアルを生々しく再生する事、新たなる存在として生まれ変わること、色々な意味を想起させる。
 昨年からそれせかを知り、自分の中の価値観や感性を全て木っ端微塵にされる程の衝撃を受けた身として、彼らのライブは一度目撃しなければならないと思い、今回は足を運ばせて頂いた。
 オープンの17時には会場であるQueに到着していたが、開演の時間まで会場は異様な緊張感に包まれており、敬遠直前には決して狭くないQueがほぼ満員の状態であったが、その緊張感はより高まっていく。これまで数多くのライブに足を運んできたつもりではいたが、この日程ライブを観るという行為に恐怖を感じた日は無い。音源でさえ心をズタズタに切り裂くそれせかの音楽に生で触れたら生きて帰って来れないんじゃないか?大袈裟かもしれないけど、そんな事すら考えてしまった。
 そして開演予定の18時オンタイム、僕のこれまでの価値観を全て破壊するライブが始まった。



 SEに合わせて静かに登場するメンバー4人、フロアは拍手で迎え入れるが、開演前以上に緊迫した空気が包み込む。篠塚氏と菅澤氏の二人の静謐なギターが空気を変えていく中で始まった「傾斜」。極限まで音数は少なく、明確な輪郭を持たないリヴァーブギターの濃霧、照明も足元の白熱電球のみという削ぎ落とされたも良い所な物で視覚的情報もシャットアウトされている。
 そんな中でこの世の希死念慮の全てを憑依させたかの様な篠塚氏のボーカル、美しく漂う音の粒子が徐々に自らの首に紐を括りつけていく様な残虐なノイズギターと変貌。アプローチ自体音源と全く変わらないのに、音源の更に上を行く密室的空気の中の死の匂い。冗談に聞こえるかもしれないけど、頭のこの一曲だけで体の震えが止まらなくなってしまい、涙を堪えきれなくなってしまって、何度も何度も声を上げて叫びたくなるのを必死で堪えていた…

 続く「冷凍保存」と「リサイクル」こそ少しはアッパーな曲ではあるが、重低音とノイズギターの精神的煉獄は続く。リズム隊のアプローチは何らトリッキーな事をしてないのだけど、何も足さない、何も引かないからこそ安定感のあるプレイに徹底しており、そんな地盤に菅澤氏の多彩な音階を多彩な音色で彩っている筈なのに、それらの全てが寒色系の色や黒めいた音として聞こえてくるギターワーク、そしてギターとボーカル、いや自分自身から放つ事が出来る物全てに全感情を怨念の様に込める篠塚氏。
 バンドとしてのアンサンブルはこれ以上無く完成されているのに、気を抜いたその瞬間に爆散してしまう恐怖。手を上げる事も頭を振る事も出来ずに、目の前で繰り広げられているリアルを目を背けたくなるのに、背ける事が出来ない。
 バンドの中でも非常にポップな側面が出ている「響かない部屋」、「参加賞」、「水色の反撃」といった楽曲もプレイされたが、そんな楽曲ですら序盤からの圧迫感は全く変わらずに演奏してしまえるのがこのバンドの凄い所だ。

 この日は今後リリースされるだろう新曲も含めて新旧の楽曲を満遍なくプレイしていたけど、どの楽曲も全くブレずに誰もが目を覆いたくなる痛みだったり隠してしまいたい現実を鳴らしていた。アッパーな楽曲もミドルテンポのスロウな楽曲も全て「それでも世界が続くなら」というバンドのリアルとして何の飾り気も無く鳴らされていただけに過ぎない。
 本当にたったそれだけの筈なんだけど、何でノイズギターが泣き叫ぶ度に、篠塚氏が叫ぶ度に、涙が溢れてしまうのだろう。本編ではMCらしいMCなんて終盤の篠塚氏の「あと3曲っ!」と最後の「ありがとっ!」位だけで、チューニング以外はほぼノンストップで生き急ぐ様にライブは進んでいった。

 篠塚氏は曲の歌詞も何度も変えていたり、最早マイクの前にいないのに何度も声にならない叫びを上げたり、指揮者の如くジャズマスターを振り下ろした瞬間にバンドサウンドを轟音の坩堝に変貌させたりと、安定感あるプレイで支える他のメンバー3人に比べて明らかに切迫感と破滅願望と救いを求めるかの様な感情をただ歌と演奏で表現する。その事実こそがカテゴライズさせない、誰にも何も言わせないリアルを表現しているんだろう。

 個人的なハイライトはノイズギターの洪水から始まった「スローダウン」だろう。「わかるかい 死ぬよりも辛いことなんて本当は この世界にはいくらでも あるってことを」という全てを暴いてしまっている歌詞のラインが凄まじいそれせかの初期からの看板曲であるが、この一曲をいざライブで体感した瞬間に、何度も何度も泣いたり震えたりしながら観ていた今回のライブで一番感情という感情が決壊を起こしてしまっていた。
 暗いだとか重いだとかって言葉で片付けてしまえば簡単なのかもしれないけど、そんな事で片付ける事が出来ない様な事ばかりが溢れているという事実、たったそれだけの事を「それだけの事」として片付けさせてくれない。この瞬間だけは立っている事すら出来なくなってしまいそうだった。

 ほぼノンストップで窒息感と緊迫感溢れるライブを繰り広げていたが、ラストは最新シングルから「狐と葡萄」で本編は終了。ラストにこの楽曲で締めくくってくれたのは個人的に一気に救われた気がする。照明も白熱電球だけのままであり、決して何らかの演出があった訳でも無いけど、この一曲がプレイされた瞬間に自分の中にある様々な感情や困惑や言葉に出来ない事全てに一つの答えを貰えた気がした。

 アンコールは一転して非常に和やかな空気で2曲プレイされたが、最後の最後の一曲の前に篠塚氏が少し口下手な感じでこの日来ていたお客さんに何度も感謝を述べ(「うちらそんなバンドじゃ無いけど、ライブ観て楽しかったと思って貰えたら。」とか「みんな立っているの辛いだろうけど、俺も頑張って立っているから。」なんて非常に篠塚氏らしい言葉だった)、菅澤氏から年末に再びワンマンツアーを行う事が告知されたり、琢磨氏が菅澤氏のギターに合わせて謎の怪談話をしたりと本編でのあの異様な空気を放っていたバンドとは思えない位のほっこりMCタイムでしたが(個人的に割礼のライブでの松橋氏の物販紹介MCコーナー並に落差を感じた)、最後の最後は「弱者の行進」でこの日のワンマンを再生完了させた。



 約二時間に渡ってライブは行われたが、ライブ終演後は僕自身異常に体力と精神力を持って行かれて、フラフラになってしまい、その状態は帰宅するまで続いたが、当の篠塚氏もライブ終盤はフラフラになりながらそれでも二本の足を地に付けて渾身の表現をこの日来ていた人に向けて放っていた。
 もしかしたらこの日目撃した物はライブって言葉じゃ片付ける事の出来ない、正真正銘の闘いだったのかもしれない。ライブが終わって数日経った今このレポを記しているが、今でもこの日のライブで体感した事は上手く纏まってはくれていない。
 でもそんな簡単にそこら辺にある言葉で片付けさせてくれない音楽を「それでも世界が続くなら」というバンドは鳴らしているんだとも思う。そこら辺にあるカテゴライズされた反抗を歌っている音楽なんかよりもずっと本質的な意味でパンクでありハードコアであると僕は思う。
 この日のライブを観て一番感じたのは、僕が世界で一番敬愛するbloodthirsty butchersの吉村秀樹という男が鳴らしていた「血を吐き続けても叫ぶ表現」という物をこのバンドは鳴らしていたという事実。それが僕がこのバンドに出会い惹かれた必然なんじゃないかとすら今は思う。
 長々と纏まらない事を綴ったが、僕は「それでも世界が続くなら」というバンドに一人でも多くの人に触れて欲しい気持ちで一杯だ。決して肌触りの良い表現をしてるとは言えないし、人によっては不快感すら覚えるバンドだとすら思う。だけど、本物の表現とはいつの時代だってそんな物であった。だからこそ僕はこれからもこのバンドを追いかけ続ける。
タグ : ライブレポ

■Fill Your Boots, Feel Your Beats Vol.2(2016年8月27日)鶯谷What's Up

 今回は色々縁があり普段行かないメロディックパンク系のイベントの方に遊びに行く運びとなった。
 メロディックパンクという音楽に関して言うと個人的に全然触れて来なかった音楽ではあり、この日観たバンドはダーサテ以外は全部全くの予備知識無しでライブを観たので、いつも以上に拙く簡単に感想を書くといった感じにはなるので、レポと呼べる物にはなってないとは思うが、普段全くそういった音楽に触れない人間の一感想として読んで頂けましたら。



・Slugger Machine

 このバンドはどうやら横須賀のバンドらしいが、調べてみたらex.loroのメンバーも在籍しているとの事。
 SNUFFY SMILE系統のサウンドの匂いを感じさせてくれるバンドであり、個人的な印象としては疾走感よりもメロディを重点的に聴かせるタイプのバンドで、そのセンスは現在進行形の90sエモリヴァイヴァルな部分にも通じる所があった印象。
 バンドの持つ哀愁だったり切なさだったり蒼さといった部分をじっくり聴かせてくれるメロディと随所随所でニクさを感じさせるギターワークも含めて初見ながら楽しませて頂きました。



・Dirty Satellites

 大分久々にライブを観るダーサテは今後リリース予定の新曲も含めて現在進行形のダーサテを存分に見せつけるライブとなった印象。序盤は本調子では無い感じこそあったが、ギアが入ったらこっちの物と言わんばかりにバンドの底力を発揮していた。
 元々それぞれキャリアがある人たちが集まって結成されたバンドであるが、僕としてはメロディックパンクとか、メンバーの過去のキャリアを抜きにしてバンドも仕事も家庭も含めた日々の生活を謳歌している人々だからこそ生み出せる生活の音としてダーサテは確かに浸透するのだと思う。
 その中で確かなメッセージや問題意識を提示しているからこそ、グッドメロディの中にある鋭さがライブではより体現されており、温もりの中に残酷なリアルを忍ばせる事が出来る数少ないバンドなのだ。久々にライブを拝見させて頂いたが、その実力は本物だ。



・Daybreak

 サウンドチェックの時点でギターアンプからメタルゾーンの音が聞こえて来て、なんだこりゃ!?となったDaybreakはこの日個人的に一番インパクトがあったバンドだった。
 HUSKER DU直系のサウンドであるにも関わらず、それをメタル畑のセンスでズタズタに料理してしまうという傍若無人な事をしてしまっているにも関わらず、曲その物の硬質な古き良きメロディックパンクの匂いが違和感を全く感じさせない。
 それどころか、下手したらTRAGEDYなんかが持つ異様なまでの悲壮感を感じさせる楽曲もあると何でもありだと思わせといて、ごった煮にした物をアグレッシブに駆け抜けるサッドネスに昇華したとんでもないバンドだった。
 こちらもメンバーの方々はキャリアのある方々らしく、これまで全然チェックしていなかったバンドだが、この日一番大当たりなバンドでした。音源の方もチェックさせて頂きます!!



・Short Straw Fate

 伝説的メロディックパンクバンドであるbroccoli(しっかり聴いた事ねえからちゃんと聴かねえとなあ)の曲名からバンド名を拝借した今回の企画の主催である若手メロディックパンクバンド。
 このバンドも地盤の部分はUKメロディックその物ではあるけど、そのスタイルを守りながらも型を破る事を模索している感じの印象。
 メンバーそれぞれがボーカルを取ったりなんかしつつも、ギターソロが滅茶苦茶渋いハードロック感溢れる物であったり、終盤にプレイしていた楽曲がメロディックパンクじゃなくてファストコアだったりという飛び道具もしっかり用意。
 そうでない楽曲もメロディックパンク好きは勿論だけど、エモ好きやハードロック好きまでアピール出来る懐の深さもありと楽しませて頂きました。
 ライブ自体もリラックスした感じがありながらも、バンドの魅力を十分に見せつけていたのでは?



 そんな感じで普段うるさい音楽のライブばかり行っている人間が全然違う畑のライブに遊びにいった雑極まりない感想文ではありますが、新しい発見も多く、楽しませて頂きました。
 それにしても最初から最後まで女性客がゼロだったのは笑ってしまったけど。

■sekien - ENSLAVE ONE TO ONE STRUGGLE GIG(2016年8月13日)@新宿dues

 先日年内での活動休止を発表した姫路ハードコアsekien。1stアルバムは各方面で多大な評価を受けたが、そのレコ発の東京編とも言えるGIGはレペゼン初台WALLことENSLAVEとの本気の喧嘩勝負な2マン。
 共に同世代であり、東京と姫路と活動のフィールドこそ違えど共にDIYなやり方でその名を広めてきた実力派ライブバンド。その決戦は新宿duesという何の誤魔化しも出来ないライブスペースで昼間からの大一番。新宿東口のあの一室で行われた本気の喧嘩は一体どちらに軍配が上がったのか?



・ENSLAVE

 先攻はENSLAVEから。お世辞にも広いとは言えないduesのステージにメンバー6人もいるとかなりの人口密度ではあったが、ENSLAVEはあくまでもいつも通りのライブを展開する事に徹していた気がする。
 ボーカル以外スピーカー無し、楽器隊の音はアンプからの生音、だからこそバンドの真の実力が試される環境の中でENSLAVEは長年に渡って鍛え上げたライブバンドとしての本領を見せつけただけに過ぎない。
 2マンライブではあったがライブは30分程、その30分の中で自分たちの音とメッセージをどこまで伝えられるか。泣きに泣きまくりなメロディと疾走するビートが生々しい荒さで炸裂する中、JEEP氏は何度もフロアに降りて雄叫びを上げ、PGさんはステージにその二本の足でしっかり立ちながら救いの叫び繰り出す。
 ENSLAVEという魂の探求者6人組はハードコアパンクの真の本質である「反逆・反抗・反撃」をその言葉と音に託しているだけに過ぎない。だからこそリアルなメッセージと音を放つ事が出来るのだ。



・sekien

 後攻は姫路ハードコアsekien。サウンドチェックの時点で生音とは思えない音量で炸裂するドラムの音に恐怖を覚えたが、実際にライブが始まったら生音で繰り出されているとは思えない強靭な音が繰り出される。
 1stアルバムのトップを飾る「絡繰」からライブは始まり、キラーチューンである「sacrifice」の悲壮感で一気に心が持っていかれる。自他共にネオクラストのバンドとして認知されているsekienというバンドだけど、僕はネオクラストという文脈だけでsekienは計り知る事は出来ないと思っている。
 sekien流のブラッケンドクラストである「岩漿」は現行のブラッケンドとは明らかに違う音の感触、完全にバンドサウンドで再現されたsekienの新機軸インスト「開花」、爆裂感全開なライブでその名を広げたsekienではあるが、膨大なる世界中のハードコアパンク(特にクラスト全般)を吸収した上で吐き出すのはENSLAVE同様に反逆者の音だ。
 「航路」の疾走感の中の異様な緊張感、本編ラストの「残照」のドラマティックさ、アンコールにて珍しく簡単ではあるけどMCをしてからの「夜明け」の怒りの音、そしてアンセム「六六六」までsekienも約30分の中で自らの怒りを音に託して出し尽くす渾身のライブを見せてくれた!!



 土曜の真昼間という時間でありながら企画自体も大入りの大成功となり、ENSLAVEとsekienの2マンという一大決戦はこれから伝説として後世に語り継がれていくだろう。
 sekienの年内での活動休止は本当に残念だが(1stアルバムが今後が本当に楽しみな出来だっただけに)、歴史は形を変えながらも続いていく。何よりも2016年8月13日の真昼間の新宿で行われたこのGIGが今後多くの人々の間で語る継がれる一戦となった事は間違い無い。
 僕自身はENSLAVEとsekienのどちらが勝者となったか判断は出来ないが、共に聴衆を圧倒するハードコアパンクを見せつけてくれた事、それだけで良いとすら思う。
タグ : ライブレポ

■いいにおいのするKrallice Japan tour 2016 東京編2(2016年8月6日)@渋谷TSUTAYA O-NEST

 4年越しの約束が遂に果たされた。ニューヨークを拠点に活動し、今やポストブラックメタルの代表格のバンドにまで上り詰めたKrallice。本来は4年前に来日公演を果たす筈だったが、それは果たされずに終わってしまった。そして4年の歳月を経ていよいよ待望の来日公演が果たさせる運びとなったのだ。
 国内サポートはこれまで数多くの海外の猛者を招聘し、今回のKrallice来日を実現させたVampillia、台湾・中国ツアーを成功させ、いよいよヨーロッパに殴り込みを仕掛けるCOHOLといった国内勢に加え、Seefeel・Locustのメンバーとして知られるMark Van Hoenもソロで初来日を果たして共演するという贅沢極まりない一夜。
 Kralliceは本国アメリカ以外で殆どライブを行っておらず、今回の来日公演は貴重な一夜。という事もあってか当日のnestは大入りとなり集客的にも大成功だったのでは無いだろうか?ブラックメタルから電子音楽までという異様な一夜は果たして日本のエクストリームミュージック愛好家にどんな衝撃を与えたのか。これは一つの事件のドキュメントだ。



・Mark Van Hoen

 ハナからMark Van Hoenのライブという非常に贅沢な感じで始まったが、僕個人としてはLocustが大好きな事もあり、Markがソロではどんな音を鳴らすかは凄く楽しみだった。
 音としては少し洒落た感じもするエレクトロニカ・アンビエントなサウンドとなっており、音だけで世界観を感じさせる物。VJを使用してのライブという事もあって、音の世界観への陶酔具合は中々の物。
 同時にブレイクコア方面にも足を伸ばした音の鋭利さも際立ち、インダストリアルなエグさもサウンドに内包されていたのが個人的に凄くツボを突いて来る。幻想的なサウンドアプローチに中に隠された攻撃的電子音の連続に思わず心が踊ってしまう。
 ライブ自体は30分程ではあったが、のっけからかなり楽しませて貰った。多方面で活躍するMark Van Hoenの実力を肌で体感したよ。



・COHOL

 個人的にはKrallice以上に楽しみだったCOHOL。今年の2月の2ndアルバム「裏現」リリースツアーのファイナル以来実に半年振りの日本でのライブとなったが、海外公演を経てCOHOLというバンドは更に強靭になって僕たちの元へと帰ってきた。
 転換こそ時間がかかってしまったが、その分最高のライブでお返しするぜとばかりによりソリッドで切れ味の増した音で攻めにかかってくる。「下部構造」、「地に堕ちる」といったライブでお馴染みとなった曲の精度もパワーアップを果たし、特に現在のCOHOLのキラーチューンである「暗君」は三位一体のサウンドがより正確さも鋭さも増して襲いかかってくる凶悪な物に。
 ITARU氏の「沢山仲間増やして帰っ来たぜ!!}という激熱MCもフロアを大いに盛り上げ、何度も何度もフロア中から突き上げられるメロイックサインはCOHOLと共にシーンを作り上げているという瞬間をダイレクトに感じさせるピュアネスその物だった。
 個人的に「裏現」で一番大好きな「急性期の終わり」を今回聴けたのが心から嬉しかった。ライブで全くプレイしていなかった楽曲ではあるが、COHOLの持つブルータルなエグさも壮大なストーリーも全て内包したエピックさすら感じる大名曲は今のCOHOLだからこそ演奏する事が出来たのかもしれない。
 その音楽性もライブも素晴らしいが、COHOLにはブラックメタルとか激情ハードコアとかという陳腐なワードは必要ない。全てが熱き魂を持つ仲間と共に作り上げる物語であり、誰もがその物語の当事者なのだ。音楽を愛する者達と生み出す熱き一大巨編。それがCOHOLというバンドだ。



・Vampillia

 今回の主催の大阪のやらかし集団Vampillia。セッティングが終わっていざライブかと思ったらKralliceのメンバーが登場し、一瞬Vampillia+Krallice!?と思わせる演奏が始まったが、普通にミッチーが登場しツッコミを入れるなんて茶番を繰り広げつつしっかりライブをスタートさせる。
 去年とかは毎回毎回色々なネタを仕込んでいた印象が大きかったが、この日のライブはお馴染みの脚立芸以外はネタ要素は殆ど抜きにしたVampilliaの音楽的実力を存分に発揮したライブとなったと言える。
 お馴染みの「Ice Fist」から最新シングル収録の「fuck you」まで彼らの中でもアグレッシブに攻める楽曲中心のセット。その中でも多人数楽団ならではの音の奥行の深さまで自在に表現するライブパフォーマンスは相変わらず高いクオリティ。ネタ的な部分がどうしても目立ってしまう彼らだけど、ネタ的な要素をほぼ封印する事によって彼らのバンドとしての実力の高さが垣間見える。
 終盤はKralliceのドラマーを迎えてのスペシャル編成でのライブもサプライズとして展開され、ただでさえ完成度の高いVampilliaのライブに更にビートの凄みを与える凄まじさを見た。どこまでも全力で音楽も馬鹿もやれるバンドだからこそ毎回毎回のライブに確かなドラマが存在する。このバンドはまだまだ色々やらかしてくれる筈だ!!



・Krallice

 そしてその実力が遂に白日の目に晒される事になったKrallice。メンバーご登場するや否や大きな盛り上がりとメロイックサイン。多くの人々がKralliceのライブを目撃したくて仕方なかったのだ。
 セットは最新作を中心に実に70分程に及ぶ地獄セット。まずは6弦ベースを弾き倒しながらボーカルも平然と取るベースの演奏技術の凄まじさにド肝を抜かれ、更には地獄のトレモロを無慈悲に叩きつけるツインギター、弦楽器隊のアグレッシブな演奏を安定した演奏で支えるドラムと「こいつら本当に人間か!?」と疑いたくなるライブの出来の凄さに漏らしそうになる。
 ブラックメタルらしい世界観的な物すら徹底的に排除し、人間離れした演奏による不条理の連続を70分も浴びていたせいで脳が情報を処理し切れなくなってパンクしそうになる。
 取っ掛りこそあるが全くノレない。目の前で繰り広げられるトレモロ地獄に口をポカンとさせて呆然と眺めるだけになってしまい、曲間のレスポンスこそ凄かったが、観ていた人々はあまりの常識外れのライブに呆然とするだけになってしまったと思う。
 初期の曲もプレイしていたが、初期の楽曲も現在の楽曲も人間的要素は徹底して削ぎ落とし、気合いが入った演奏すら理解困難の混沌へと突き落としてくる始末。
 70分に渡って轟音を浴びて満身創痍になってしまったが、ライブ終了後はなんとも言えない開放感というか、憑き物が取れたみたいな気分になった。毒で毒を解毒するみたいな感覚すらあった。
 これを書いている今でもKralliceのライブは理解不能の領域ではあるが、一つだけ言えるのは本当に凄いライブを目撃してしまったって事だけだ。



 全ライブ終了こそ遅い時間にはなってしまったが、沢山いたお客さんの誰も帰らずに最後まで混沌の地獄を満喫していたのが印象に残っており、まだまだエクストリームミュージックも大きな盛り上がりを作ることが出来るんだなって改めて実感できたのも今回個人的に嬉しかった事でもある。それとたくさんの人と普通にコミュニケーションを取っていたKralliceのメンバーはステージとギャップを感じる位にフレンドリーな印象だった。
 4年越しの約束を果たして下さったいいにおいチームの皆さん、本当にお疲れ様でした。次は是非ともLiturgyを呼んでください!!
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プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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