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■孤高の存在/ANODE

孤高の存在
孤高の存在
posted with amazlet at 18.02.23
ANODE
インディーズ レーベル (2007-10-01)
売り上げランキング: 886,236




多くの人は日本国内の激情ハードコアと言うとenvy、killie、heaven in her armsといったバンドを思い浮かべると思う。
それらのバンドは素晴らしいバンドであり、シーンを作り上げた立役者であるが、それらのバンドと全く違う位置にあるバンドもシーンを作り上げたのも事実であり、メインストリームの文脈から外れた位置にあるバンドもまた確かな文脈を作り出している。

かつてANODEという本当に素晴らしい激情ハードコアバンドが存在した。今作はそんなANODEの07年リリースの1stフルアルバム。COSMIC NOTEとKAFSの共同リリースの全7曲入り。
アルバムタイトルは「孤高の存在」。とんでもないタイトルを自らの作品に冠しているが、ANODEは本物の孤高の存在であると今作を聴けば分かる。



僕自身はANODEが墜落してから彼らの存在を知り、リアルタイムで追えなかった身だが、何度今作を聴いてもANODEの中に存在する文脈や影響が本当に分からない。
決して奇をてらったサウンドスタイルではなく、むしろストレートな激情ハードコアを鳴らしているが、「◯◯っぽい。」とか「◯◯の影響を受けている。」といった要素がANODEには全く無い。
ただ一つだけ確かなのはANODEは紛れもなくハードコアパンクの真髄を鳴らしている事だけだ。

ツインギターの悲哀に満ちた独自のメロディ、苦悩や葛藤を曝け出し、世界と対峙する言葉の数々、異常なまでに緊張感に満ちた空気。
厳格極まりない音と言葉は快楽的な退廃感とは全く無縁であり、研ぎ澄ませた精神を真っ直ぐに解放するのみである。
激情と美しさの狭間にありながら、洗練とは無縁で泥水の中をひたすら泳ぎもがく様な激昂のノンフィクションをANODEは描いている。



ANODEは09年にこちらも大名盤である2ndアルバム「負の新種」をリリースし、その直後に墜落してしまった。
しかしANODEは文字通り孤高の存在として今なおフリークスの心の中で生き続けている。
他所からサウンドスタイルを借りパクなんかせず、自らのハードコアパンクを突き詰めた結果、似ているバンドが全く存在しないANODEだけの表現が今作には存在している。

ANODEが鳴らすハードコアパンクは魂で触れなくてはいけない切迫感と厳格さがある。
00年代日本という時代を駆け抜けたANODEは、決して忘れ去られてはいけない存在だ。その存在が消滅した現在だが、多くの人々に語り継がれるべきバンドだ。




■Mensch, achte den Menschen/死んだ方がまし

Mensch, achte den Menschen
Mensch, achte den Menschen
posted with amazlet at 18.02.22
死んだ方がまし
死んだ方がまし (2017-04-08)
売り上げランキング: 393,186




死んだ方がまし。本当にとんでもないバンド名だ。
人間なら誰しもが死んだ方がましって感情を抱いたことは一回どころか何回もあるだろうが、それをバンド名として冠している時点でこのバンドはただならぬバンドである。
2012年に結成されたTokyo Blue Days Punkこと死んだ方がましの2017年リリースの待望の1stアルバムである今作は怖いくらいにロックの本質だけを掴んでしまった大名盤だ。



正統派ニューウェイブ/ポジパンサウンドを基軸に、時にはみんなが大好きな往年のV系やSSE周辺のバンドのテイストも感じさせるサウンドはロックとしては勿論、パンクとしても何一つ現在の主流になっているものとは全く別の位置にあり、下手したら逆行的でもある。80年代に名を馳せたアンダーグラウンドのパンクバンドの全てを凝縮したかのような音だけを鳴らしている。

そしてハイトーンで文学的に吐き捨てられる言葉の数々は何一つ救いなんかありはしない。絶望や虚無といった感情を余計な装飾抜きに並び立てられている。
それが妙に耳に残るメロと痙攣しながらループするギターフレーズと変則的なビート、躁鬱を終わりなく繰り返すような音と共にズタボロに聴き手を切り刻んでいく。

そもそもロックは勿論、音楽は誰も救わないし、世界を変える事なんてまず不可能だ。
だからこそ世界が空虚になればなるほどにロックの意味が問われる筈だ。
今作はどうせ世界も滅ばねえし、誰も殺すことも出来ないんだから、このまま一人孤独に死んでしまってやるというロックの一番危険な感情をパッケージしている。
だからこそ一時的な物だとしても、そうした感情を抱えている人には何処かで届くのかもしれない。



ディストピア完成間近を迎えている現代の日本。頭を空っぽするを通り越して白痴にすら陥ったポジティブの押し売り、「僕は病んでる君の事を理解しているよ」と嘯き続ける安い絶望のチラ裏、Twitter映えばかり狙ってRT数が稼ぎたいだけの表現もどき、それら全部このバンドに焼き払われてしまえとすら僕は思った。
共感だとか共有だとか上っ面の理解者ごっこなんて糞食らえとばかりに自爆テロだけを死んだほうがましは続けている。これでもかとばかりに大半の奴らが見て見ぬフリを続けている病巣を暴き続ける。

「狂ってるのは俺じゃなくてお前らだ。」とばかりに発狂した感情と音を投げつけてくるが、実は誰よりも正常な感受性を通過した上で鳴らされているからこその表現なのかもしれない。
そして誰にも寄り添いもしない。腐りきった世界だけを暴く。

日に日に空虚化していく現代社会に痛烈なカウンターを食らわせる今作は、外側も内側も焼き払って自爆する様なカタルシスすらある。
だからこそ僕は何度も今作をリピートしてしまうのかもしれない。



■suicide note ep/agak





document not found、tetola93、doopamin、union of snakes、FADELESS DECISIONのメンバーが在籍している事で、激情ハードコアフリークスからは前々から注目を集めていたagakの2017年リリースの初の正式流通音源。

日本国内でも激情ハードコアという音楽は黎明期をとうの昔に終え、音楽的には一つの到達点を通過し、人によっては過渡期に入っていると感じる人も多いかもしれないが、agakからはその事実と向き合い激情ハードコアを次のフェーズへと更新しようとする気概を感じる。



日本国内でも激情ハードコアという音楽は独自の進化を遂げ、USや欧米諸国と違う日本独自の文脈を確かに確立しており、agakは間違いなくその文脈にあるバンドだ。
それこそメンバーが在籍していたTetola93は日本じゃなければ生まれる事の無かった激情ハードコアであり、USや欧米諸国の激情ハードコア以上に陰鬱でヒステリックな悲壮感こそ国内激情ハードコアの一つの武器だと僕個人は感じたりもする。
agakを語る上で、悲壮感というワードは絶対に外すことの出来ない物であり、ツインギターが織り成す陰鬱なギターフレーズの数々はagakの肝とも言えるだろう。

楽曲はヴァイオレンスなビートダウンや変則的な曲展開を盛り込み、時にトラディショナルなハードコアを独自に解釈したかの様なフレーズも飛び出す。
ドロドロとドス黒い混沌の中から悲哀を感じるメロディが楽曲を引率し、メロと多展開という二つのフックが見事なバランスでガッチリ組み合わさり、そこに日本語詞の痛々しい叫びが乗る。
第5曲「循環」は特にagak持ち味が一番堪能出来る名曲となっている。



プログレッシブさと黒さも魅力的な作品であるが、それ以上に印象的なギターフレーズとメロディが研ぎ澄まされた傑作となった。
ANODE、STUBBORN FATHER、langといった日本独自の文脈の中だからこそ生まれた激情ハードコアは確かに存在する。
それらの素晴らしいバンドと同様にagakもメンバーのキャリアは勿論、新しい文脈の中で生まれた素晴らしいバンドである。

今作はコンパクトなEP作品であるが、今後リリースされるだろうフルアルバムは国内激情ハードコアの新たなclassicとなり得る怪作になる予感を孕んでいるって期待も高まる素晴らしい作品だ。



■消える世界と十日間/それでも世界が続くなら

消える世界と十日間
消える世界と十日間
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それでも世界が続くなら
ベルウッドレコード (2017-07-26)
売り上げランキング: 7,467




それでも世界が続くならというバンドほど不器用なまでに普通なら見たくない事を暴こうとするバンドはいないと思う。

結成から現在に至るまで人の痛みとリアルを愚直なまでに歌い続けて来たそれせかの2017年にリリースされた7thアルバムは「一人の人間の人生を、よりリアルに音楽に閉じ込める」ことをコンセプトに、篠塚が約十日間に渡り楽曲を作り上げたドキュメント作品となっている。



これまでの作品同様にほぼ一発撮りでライヴでの空気感をそのまま音源にした様なサウンドプロダクトに仕上がっているが、今作ではそれがより作品のコンセプトにリアリティを与えている。
並べられた楽曲こそ様々な表情を見せるが、どの楽曲もこれまで以上に「暴く」という事により大きな比重が置かれている。

楽曲そのものはポップであり、歌物としてのクオリティが凄まじく高いにも関わらず、それをズタズタに切り裂くノイズギターとざらついた音と言葉の数々。作品が進んでいく程により突きつけられる感覚に襲われる。
鋭角なノイジーさがバーストする新たなキラーチューンである第1曲「人間の屑」、繊細なアンサンブルの静けさからドラマティックに轟音がバーストする第7曲「消える世界のイヴ」の二曲からは特に痛みを乗り越えた先を生きることを新たなる犯行声明として歌う楽曲も魅力的だが、僕個人は第4曲「正常」と第9曲「水の泡」の2曲が特に今作の核となる楽曲だと思う。



風俗嬢も 警察も 詐欺師も 先生も
言いたい事は同じ 金を稼げ

正常/それでも世界が続くなら




残酷なまでに綺麗事抜きの真実を死刑宣告の様に歌う「正常」はそれせかの持つバンドとしての本質が特に表れた楽曲だろう。

「水の泡」も同様だが、当たり前に横たわる見たくもない聞きたくもない真実を突きつけ暴くのがロックである事からそれせかは逃げていない。
耳触りの良い言葉を選ぶのなんて本当に簡単で、世の中なんて綺麗な言葉だけを欲しがる人間ばかりだ。そんな人間相手に教祖様になればもっと売れるし、もっと金も稼げる。
じゃあそれせかは何故それをしないのか。まだ正常でありたいからこそ、狂った事が当たり前になってる事を暴き続けるしかないのだ。




今作も楽曲の完成度自体とんでもなく高く、純粋にギターロック/オルタナティブロックとしてのメロディセンスの凄まじさもそうだが、そんな楽曲に乗る言葉は普通なら選ばれない言葉ばかり。だから暗くて重く、聴き手を本当に選ぶ。

だからこそ聴き終えた後に聴き手の心に確かな楔を打つ。だからそれせかはロックの本質だけを常に掴み続けるのだ。



■さよならノスタルジア/こうなったのは誰のせい

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神戸を拠点に活動する若手ダウナー系ギターロックバンド、こうなったのは誰のせいのタワーレコード限定リリースデビューミニアルバム。
プロデューサーとしてそれでも世界が続くならの篠塚将行を迎えている事からこのバンドを知ったが、若手バンドながら既に高水準の音を完成させている。




00年代初頭頃の内省的なギターロックの空気感とマスロック・ポストロックを融合させたサウンドは残業レコード辺りのバンドの空気感と近いものを個人的に感じるが、このバンドはより痛みや後悔といった感情をストレートに歌い上げている。

目まぐるしく繰り出されるタッピングフレーズと変則的なリズム隊のグルーヴのプログレッシブなサウンドが展開されているが、そうしたテクニカルさ以上に、Vo.Gtのカイトが歌い上げる個人的感情の生々しい痛みが響く。
変態的サウンドとは裏腹に収録されている楽曲はどれも哀愁のメロディと歌が全面に押し出されており、その対比がこのバンドの魅力だ。
一寸の隙の無いアンサンブルが時にノイジーに変貌し、うずくまった感情をそのまま音にした様なサウンドは生々しいザラつきと共に美しく響き渡る。

第5曲「拝啓」の様なアコギ弾き語りの楽曲を聴くと分かるのが、あくまでも歌とメロディを軸にした上で、技術先行型ではなく表現の為のプログレッシブなアプローチをこのバンドが展開している事。
変態的なフレーズの数々も印象に残るが、それ以上に歌と言葉が脳に残るのはこのバンドの持つ内省的個人的感情としてのロックが確かなリアリティと共に確かに伝わるからだ。



鋭いサウンドアプローチの中に潜むアメーバの様に聴き手に忍び込み、気付いたら浸透し毒となり麻薬となる様なサウンドは青紫色の美しさと醜さが同居したものであり、聴き手の数だけ後悔や諦念といった感情に訴えかけて来る。

残業レコードを代表する伝説的バンドthe cabsが持っていたポストハードコアの域まで迫る鋭角の鋭さも、プロデューサーを務めた篠塚のそれでも世界が続くならの持つ見たくない事や聞きたくない事をノイジーに暴く様な生々しさもこのバンドには確かに存在している。

この生々しい痛さと重さは人を選ぶかもしれないが、今の時代だからこそ、感受性が豊かな人には確かに届く作品になっている。
00年代ギターロックが青春だった人は勿論だが、今の時代だからこそこうした音が若いリスナーに届いて欲しいと願う。
今後が楽しみなギターロックバンドが久々に登場した事が僕は嬉しい。


プロフィール

AKSK

Author:AKSK
メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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